高校生向け講義:研究課題と地域課題

先日、高校の探究学習のゲスト講師として、研究課題についてお話しする機会をいただいた。
ところが、高校の探究学習では『研究』と『実践』が混在しているため、それらを識別する必要があると感じた。
そこで、ここに示すような講義を提供した。
どこかの誰かのお役に立てるならと考え、講義録をアップする。

 

□研究「課題」と実践「課題」

今日、みなさんにわかっていただきたいのはこれだけ。

世の中の大半の大人が、「課題」という言葉の意味をちゃんと理解せずに使っています。みなさんは、今日理解していってください。これを理解していると、いないとで、みなさんが今取り組んでいる探究、大学に入ってから研究に取り組むとき、どんな課題を考えたらいいのかで、多くの人が迷うが、迷う心配がなくなる。課題って何だっけということをちゃんと理解していると、嘘の課題、勘違いした課題に惑わされない。

例えば、「この地域では少子高齢化が大きな課題となっています」この、誤りを指摘してください。地方の市役所や、町役場では、よく言われています。これは、明らかな間違いだと言うことを、この授業の終わりには理解してください。

1.研究と実践

研究の前に「勉強」がある。勉強は、われわれより前の人が見出した知識、考え方を学んで身につけていく。同じ体験をしようと思うと、人類の歴史をたどって実体験するのは無理。ある程度きちんとまとめて、学んでいくのが勉強。

 

大学では「研究」という活動が始まる。自分でなにか問題を考えて、答えも自分で編み出す。皆さんが取り組んでいる「探究」もこの流れにある。ただ、「探究」には、「研究」という部分だけではなく、もう一歩、「実践」という部分が入る。

高校の探究学習では、研究と実践はセットでやっている場合が多い。研究は、世界のメカニズムを解明すること。なにかメカニズム、なにとなにが関係しているか。例えば、台風が発生するときは、なにが原因になっているのか。海水面の温度が27度を超えると、海水の蒸発が活発になる。そのときの蒸発熱が台風のエネルギーになる。海の温度が高いと、台風は強化されていく。逆に、海から陸上にあがると、水蒸気が来ないから勢力が落ちる。これがメカニズム。どういうメカニズムで台風ができているのか。気になる現象、出来事のメカニズムを解明するのが研究。

解明したメカニズムをうまく利用して、世の中にハッピーなことを増やすのが実践。われわれの身体の細胞が再生するメカニズムを研究して解明する。そのメカニズムを使って、再生医療という形で、今まで直すことができなかった病気を治せるようにしようというのが実践。

2.研究の流れ

研究というプロセスの流れを紹介する。まずはテーマを選ぶ。自分はどういう切り口でものを見るのか。切り口とは、よく使う簡単な例を紹介する。みなさんの多くが進学されると思う。大学には学部、学科の専門分野がある。その専門分野が切り口。自分は生物学の切り口で見たい。例えば、栗原市を生物学の切り口で見たら、どんな昆虫がいるか、どんな魚がいるか、どんな野生動物がいるか、どんな植物がいるか、見るポイントが切り口。栗原市を経済学の視点で見たいと思ったら、人口がどうか、どんな産業構造かといったことをテーマに設定する。

第二段階は、興味があることを決めたら、先行研究の確認をする。ここが、ものすごく狭い。高校生でできる範囲はそんなに深くはない。それでかまわない。今頑張って調べたけれど、3年たったらあのとき調べ切れていなかったけれど、こんな話があったんだと言うことが出てくる。それで当たり前。私が大学院の頃、駆け出しの研究者の頃、一生懸命調べていたつもりだったけれど、10年たったらもっといい先行研究があったということがある。それで、全然かまわない。ただ、調べないのはよくない。可能な限り、今までにどういうことがわかっているか、調べる。

第三段階、リサーチクエスチョンを設定する。

第四段階、仮説を設定する。こうじゃないかなと仮説を立てる。台風のメカニズムはどうなっているんじゃないかなと問いを立てたら。下から水蒸気の熱で大きくなっているんじゃないかなと仮説を立てる。それを証明するための、例えば文献を調べたり、調査したり、実験したりする。

第五段階、最後に研究結果まとめて発表する。

みなさんがこれから取り組むのはどちらか。どちらでもかまいません。自分でどっちかわかってやってください。自分は今は研究部分をしている、自分は実践部分の話をしている。これがごちゃ混ぜになると、お互いに話がかみ合わなくなる。われわれはメカニズムを知ろうとしているのか、メカニズムはわかっているからそれを使って、いいことを起こそうとしているのか。どちらをしようとしているのかを区別してほしい。そのとき「研究」と「実践」では、同じ課題という言葉を使っても意味合いが違う。

「研究課題」は、事象、出来事、物事の中にあるメカニズムを解明するための問い。

われわれの身体の中の細胞は、どうやって再生するのか。台風はどうやって成長すうのか。そこにどんなメカニズムがあるのかを解明するための問い。もう一つは、もしかしたらこうではないかなという仮説を立てる。最初は当てずっぽうかも知れない。今までにみなさんが学んだ知識をもとに仮説を立てる。この問いを横文字でリサーチクエスチョンという。この仮説を、例えば調査や実験をして、あっているかどうか確かめる。間違っていたら、次の仮説を考える。あっている状態になるまで、それを繰り返すのが、研究という活動。答えはわからない。われわれ研究者、あるいは科学者にとっても答えがわからないから、こうじゃないかなと試しに仮説を立てた確かめる。試しに立てて、確かめることを繰り返す。

「実践課題」は、例えば、この地域で人がたくさん集まる場所にしたい。そうなるためにはどうすればいいのか、何をしなければいけないのか。

そうなるために必要なことはなにか。これが実践課題。まず、望ましい将来像を決めるところからスタートラインになる。そこに至るために、解決しなければならない事柄が実践課題。これに取り組む人は、どうすれば解決できるかという仮説を立てる。同じ「仮説」という言葉でも意味合いが違っている。実践課題の場合は、試しに実践して、うまくいくかどうかを確かめて、改善する。

 

実践課題の例をご紹介する。私は今、54歳のおじさん。みなさんのご両親より年上だと思う。見ての通り、いわゆる中年太り。本日現在の体重が76kg。ちなみに高校の時は56kgでした。菅田将暉さんの体重は57kg。もし、体重だけでも菅田将暉になりたいと思ったら、体重を76kgから57kgまで、19kg落とすことが課題。どこに危殆化を決めたらギャップがある。ギャップを超えることが課題。横綱白鵬関の体重は154kgだそうです。私が白鳳の体重を目指すなら、80kg近く体重を増やすことが課題。どちらを目指しても、私が今76kgであることに変わりはない。これが現状。

実践課題は、将来像をここに行きたいと決めて、そのためにクリアしなければいけないことを実践課題という。一方、私がなぜ76kgなのか、そのメカニズムを調べるのが研究課題。なぜこの体重なのか、原因を調べる。食べ過ぎ、飲み過ぎ、運動不足、ストレス、いろいろな仮説が立つ。ではどうすれば、それを確かめるかを調べる。

研究課題と実践課題の違いをおさえる。今日、一番大事なことはこのポイント。みなさんがこれから取り組まれるのはどちらの課題か。そう意識してもらいたい。ちなみに、大人の大半はこの二つの区別どころか、今現状、よくないことを課題と言ってみなさんに紹介する場合がある。人口減少が課題ですと言われたら、多くの人は納得してしまう。今の話から、違うことがわかると思う。栗原市の人口が、30年前に比べて少ないことが課題ですと言われたら、納得しそうになる。そうではなく、もし、栗原市が30年前の人口に戻したいなら、課題は人口を何人増やすこと。人口が少ないままでも楽しく暮らせる栗原市にしたいという将来像があったら、少ない人口で楽しく暮らすことが課題。いずれにしろ、人口が減っているということはどちらかというと都合がよくない現状。都合のよくない現状と、現状と、課題は違う。課題でも、実践課題と、研究課題と、二つがある。これらを理解して、気にかけて使う。混ぜてしまうと全く議論がかみ合わなくて、おかしな事になる。

研究の例。これから大きな地震が起こりそうな南海トラフの地震と、中部日本・西日本の内陸地震がつながっているのではないかと仮説を立てた。地震のメカニズムを知りたいけれど、すべての地震のメカニズムを一度で知ることは難しい。そこで、西日本、中部日本に、場所を絞り込む。内陸被害地震と巨大海洋性自身の相互作用に、問いを絞り込む。この二つが関係があるのではないかと絞り込む。関係があるのではないかと仮説を立てる。どういうふうに示すことで答えを示すことができるか、モデル化して示すと、成果を絞り込む。こうして、問いが固まる。

3.興味を問いにする

最初は漠然とした興味。日本って地震が多いなぁ。元々高校時代には興味がなかったが、大学に入ってから気になることはないかなと出てきた興味がこれ。地震はどんな仕組みで起こるのか、巨大地震は予知できるのかとぼんやりと疑問を持ち、問いを立てた。その中で、すでにわかっていることを論文、資料で調べた。その中で、誰も解明していないことがあったとしたら、それは自分だけの問いになる。すでに解明されている先行研究がどれくらい調べられるかが、最初のうちは難しい。後から他の人の研究が出てきても、あまり気にしなくていい。自分で突き詰めるプロセスは身につけてほしい。

4.問いを磨く

誰も解明していないと思ったら、自分の問いになる。最初の問いの段階では、寄与大地震と小さい自身はなにか関連しているのかなと考える。昔に起こった地震の発生データを見ると、関連がありそうな感じがする。

次に考えるのは、もしこれが解明されたら、巨大地震をある程度予測して、被害を減らせるかも知れない。自分の問いが解明されたら、世の中がハッピーになるかも知れない。ここで注意することは、どうすれば巨弾地震を予測して被害が減らせるか、という問いではリサーチクエスチョンにならない。これは実践上の問い。被害を減らすという将来像のために解決すべき課題を考えるときの問いが、どうすれば巨大地震を予測して被害を減らせるか。

 

4.リサーチクエスチョン(研究課題)

リサーチクエスチョンは、巨大地震と小さい地震は関連があるかないか、あるとしたら、どんなメカニズムがあるのか知ろうとすること。ここまでわかると、リサーチクエスチョンは、巨大地震と小さい自身は関連しているのか。調べればわかることは調べる。テーマが大きすぎると手に余る。世界中の地震では手に余るので、場所を限定する。あるいは、地震の中でも内陸の地震と海の地震の関係だけを取り上げると小さくする。小さくするということは、自分で調べたり、実験したりして、仮説を立てられるまで小さくする。

例えば、世界の戦争の発生のメカニズムというと、なぜ世界で戦争が起こるのか解明したら戦争はなくなるかも知れない。一方で、どうやって手を付けたらいいのかわからない。それはテーマが大きすぎる。戦争と言っても、アラブの戦争もあれば、アジアの戦争もある、国の中の内戦もある。戦争という名前は使っていない紛争もある。原因もいろいろある。基本的には資源の取り合い。石油、食料。だけれども、そこに宗教が絡む場合もある。いろいろ細かな話が出てくる。では、どれか一つだけにしようと、絞り込む。どれか一つでいい。全部やろうと思わないこと。みなさんがこれから調べるときに、いろいろな論文を見てください。本当に細かい、戎馬のこの炭しかつついていない。自分の力で扱える程度に細かく、ごく一部だけを考える。もしかしたらこうじゃないかなと、自分の仮説を持てるようにする。

先の論文のリサーチクエスチョン、研究課題は、西日本の内陸地震と巨大地震の関係はどんなメカニズムになっているのか。このリサーチクエスチョンに対して仮説を立てなければいけない。

5.仮説を立てる

仮説を立て、どうすれば検証できるかを考える。西日本は東西から圧力がかかる中で断層で区切られた塊が回転するように動いているのではないか。そのときは、昔の地震の記録を読み解くことと、コンピュータによるシミュレーションで検証した。自分のできることで、検証できる範囲に絞り込んで、取り組んだ。

よいリサーチクエスチョンとよくないリサーチクエスチョンの違い。今後みなさんが探究活動をされる上で使えるので、ぜひ保存しておいてほしい。良いリサーチクエスチョンはオリジナル、自分だけの問い。なんとなく答えの見込み、仮説を持っている。小さなテーマで、その先に大きな物事とつながっている可能性がある。今なら、西日本の地震だけれど、世界中の地震のメカニズムの一部、もっと調べることを増やしていったら、研究を増やしていったら、世界のことがわかるかも知れない。自分の能力や資源で、自分でできる範囲のもの。8億円くらいするような実験機材がないとわからないものでは扱えない。使えるときになれば使えばいい。今は使う権利がない。そこは手を出さないでおく。大事なことは、知りたい物事の背後に組み込まれているメカニズムを理解しようとする。メカニズムとは、なにとなにが関係しているのか、その関係を理解する。

 

例えば、今日の気温だと、ジュースとアイスクリームはどちらが売れるか。自分の感覚ではどちらか⇒ランダムに聞くと、ジュース:アイスクリームが5:2。

自分の経験から仮説を立てる。もしかしたら、これくらいの気温ならジュースの方が売れるかも知れない。そこで終わると面白くない。なぜ、どんなメカニズム? 気温・湿度と、ジュースを飲みたいか、アイスクリームを食べた以下の欲求の間には、どんな関係があるか。後で議論してみてください。

 

背後に隠れているメカニズムを知ろうとするのがリサーチクエスチョン。

どういう仕組みになっているのか、ここから外れない。調べて、ジュースがほしい人が多かった。これは事実をそのまま言っているだけ。こうして出されたものがレポート。だけれども、なぜそうなっているのか、なにが影響しているのか。例えば湿度が高くて温度が高いとき、口の中の粘膜の状態がこうなるから、よりジュースが喜ばれるのかも知れないと仮説を立てて、確かめる。結果がこうでした。仮説が当たっていました。あるいは仮説が外れていました。仮説が当たっていたらよし、外れていたら、次の仮説を立てて、確かめる。こうしてどんどんよさげな答えに近づいていく。

 

リサーチクエスチョンとしてやってはいけないこと二つ。一つは将来を予測する。将来予測は研究テーマではない。ただ、実践課題の時には必要。将来を予測すると言うよりは、将来はこうありたいと決める。例えば、大学の医学部に行きたいと思っている人がいるかも知れない。あるいは文学部に行きたいと思っている人がいるかも知れない。あるいは、高校を卒業してアスリートとして生きていく人がいていい。大リーガーになりたい人もいるかも知れない。慣れるか慣れないか考えるより左傾に、なりたいと決める。これが実践の世界。実践の世界は、こうありたい姿を先に決めて、そこに至るためにどうすればいいかを次に考える。それは実践の話なので、研究の取り組みにはならない。だから良くないと言うことではなく、切り分けて使う。実践の課題なのか、研究の課題なのか、切り分けて使えればいい。実際に世の中、みなさん自身をハッピーにする可能性が高いのは実践課題。実現すればハッピーになる。

 

もう一つは、すでにある理論を何かに当てはめると当たっていた。これも違うこと。仕組みがある程度わかっている。仕組みがわからないところ、メカニズムがわからないところを掘り下げて、どんな仕組み、メカニズムか知ろうとするのが、研究課題、リサーチクエスチョン。

 

6.仮説検証

研究課題での仮説検証のパターンは四つ。一つは先行研究。今まで、いろいろな人が似たような研究をしているから、それと矛盾しないように、そこに一つでも新しいことが付け加わったらオリジナルのこと。結論の99%が今までと同じで、1%だけ自分が新しい子を見つけたことがあれば、それで十分。二つ目は資料を探し出す。三つ目は、実験で確かめる。理科の実験だけではなく、社会的実験もある。四つ目は、調査。フィールド調査、アンケート調査、観察することもある。昔の同僚は、フィリピンの原住民族の生活様式の研究がテーマだった。1年のうち2か月くらいフィリピンにいて、フィリピン人の少数民族の村に入って、一緒に暮らす。一緒に暮らしながら、何をしているかメモをする。これは観察というやり方。メモしながら、これはどういうことか話しかけてメモしていた。四つの手法のうち、確実に使うのは先行研究。先行研究と三つのうちどれかを使うことを通して、自分が思っていた仮説があっているかどうかを確認する。

 

実践課題の場合、こうすればうまくいくのではないかという仮説。だからやってみる。やってみてうまくいくかどうか確認して、うまくいかなかったら修正して、またやってみる。仮説検証の仕方が全く違う。こうすればうまくいくんじゃないのという仮説をやってみる。やってみて、うまくいかなかったら修正することを繰り返して、やがて課題が解決するに至る。

実践課題は解決するための課題。研究課題は結論を導き出す、メカニズムを紐解くための課題。

 

最初の問いに対する回答

「この地域では少子高齢化が大きな課題となっています」という言い方をされたら、それは課題ではないと言わなくていい。言われた方はピンとこない。こういうことはあまり習わないなから言わなくていい。ただ、みなさんの中で理解してほしい。課題と「望ましくない現状」を混同してはいけない。課題と望ましくない現状は混ぜこぜにしている場合が良くある。私は体重76kgの中年太りのおじさん。望ましくない現状と言っていい。だけれども、課題ではない。どうなりたいか、そのためになにをクリアしなければいけないかが課題。

例えば、少子高齢化が進んでいるとしたら、どうありたいのか、どうなりたいのか。そのためには解決しなければいけないことがある。それが実践の課題。多くの大人が混在して使っている。みなさんにも、混在した状態で情報提供されると思う。みなさん方は受け止めた段階で、切り分けてください。この人が言っているのは研究課題か、実践課題か、望ましくない現状か、この三つをしっかり識別してください。

研究課題とは、事象の中にあるメカニズム解明するための問い。
実践課題とは、望ましい将来像に至るために解決しなければならない事柄。
さらに、「望ましくない現状」のことを課題と表現する人も数多くいますが、三つを切り分けて、これからみなさんの探究、研究か実践かはみなさん方次第、それに取り組んでいただきたい。

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