自分と大学との関わりを見つめ直し、事業を再構築する

2019年になってはや一月が過ぎようとしている。
普通なら、年初の考えを三が日の間にでもまとめておくところだが、今年は考えるべきことが多く、まとまるのに時間がかかってしまった。
その割に出てきた結論はすごくシンプルで、振り返ってみると「なんだったんだ」と拍子抜けするほどだ。

会社を起こしたのが2010年の1月。
当時は株式会社出藍社という社名で、中小企業や中間支援組織向けのコンサルティングや研修事業をはじめた。
東日本大震災を機に、2012年に仙台に会社も住まいも移し、翌年社名を株式会社知識創発研究所に変更した。

知識創発とは、集団の中で個人の相互作用と外部からのエネルギーの注入によってその集団内にそれまでと次元の異なる新たな知が生まれるプロセスを指す。
このプロセスは、例えば企業でも、地域でも、大学の教室の中でも共通したものとして考えることができる。
そして、このプロセスを活用した大学教育の教学マネジメント改革を事業の主軸に置くようになった。

大学を対象としたのは、マーケティング活動を通した意思決定ではなく、個人的な思い入れによるものだ。
自分自身は、不出来ながらも研究者としての教育を受けることで、知的好奇心を深め、知識・情報の連結・転用がある程度できるようになり、それがいわゆる汎用的な能力につながっている。
一方、現在の大学教育が「産業界のニーズへの対応」や、さらには「就職活動への対応」といった、表面的な知識・技能の習得にシフトしている現状は、私が考える「大学教育」の価値を大きく損なうものとして映った。
むしろ、大学で、カリキュラムの進行に合わせて、仮説検証を軸とした探究の機会を増やすべきであり、そのようなカリキュラムで学んだ学生のほうがよほど「実社会」でも高い能力を発揮すると考えたし、今もそう考えている。

企業向けの研修プログラムの開発にもその考えが反映された。
「学ぶ職場ゼミ」に代表されるセミナープログラムでは、経験学習と仮説検証を軸とした学びのプロセスが、職場で新しい知恵を生み出すために有効であることを伝えてきたし、実際にそうなっている。
大学での教学マネジメントについては、大学の同僚に少なからぬ迷惑をかけつつ、与えられた小さな権限の範囲内ではあるが、次々と新規の取り組みを行うことができている。

そして、2019年が明けた。
年初にあたって考えたことは、自社の事業、あるいは自分自身の活動の方向性だ。
外部要因としては、2020年3月で大学で取り組んでいるプロジェクトが終わること、内部要因としては、自分自身を駆動する欲求と現実のズレを意識しだしたことがある。

大学教育において、仮説検証を軸とした探究の機会を増やすということは、基本正しい方向性だと考えている。
特に、環境変化が大きい中で、企業にしろ地域にしろどのように自らを変えていくのかを模索するときには、仮説検証の能力が必ず必要になる。
それはよい・・が、それで自分は良いのか。
大学教育に対する自分のこだわりには、厳しい経済状況の中でどうしても大学教育を受けたかった若い頃の自分の強い欲求が反映されているのは確かだ。
そのため、より良い大学教育を世の中に残したい・・という気持ちになるのも無理からぬところではある。
しかし、自分自身大学で追求したもの、自分自身の知的好奇心を鷲掴みにして離さなかったものはなんだったか。
それは、自然や社会を問わず、様々なメカニズムのダイナミクス(動力学)だった。
とくに、小さな要素の相互作用から大きな構造が生まれるプロセス、自己組織化と創発に心を奪われ、それを地震や経営に適用しようと無い知恵を絞っていた。

こうして振り返ってみると、大学教育をより良いものにしたいというのは、自分自身にたいする制約的な欲求(造語です)であるのに対して、自己組織化や創発の社会への応用というのは、なんの制約もない、自分の心の底からあふれる欲求であることがわかってきた。

どちらも重要な欲求だが、ベクトルが完全に一致しているわけではない以上、両方に取り組むと力をそがれる。
50代も半ばになる今年、自分の心の底からあふれる欲求に対してのみ正直になることにした。
その結果、弊社の事業ないしは私の活動は

  1. 創発型組織の開発:激しい環境変化を逆手に取って発展・進化する組織のメカニズムを整理し、多くの組織で実行できるパッケージとして研修ないしはコンサルティングの形式で提供
  2. コーディネーター型マネージャーの育成:創発型組織を適切にハーネシング(馴化)し創発的戦略を実行する中核人材の育成プログラムを研修ないしはコンサルティングの形式で提供

という点に集約することとした。
当然、お役立ちの対象となるお客様は

イノベーションを志す組織体(企業、自治体、その他)

となり、この範疇に収まらない仕事は今後お引き受けせず、より適切な企業ないし個人をご紹介することにする。
従来と比べて、見かけ上あまり変わった感じはしないが、企業へのコミットメントが一段と強くなる。

多くの企業のお役に立ちつつ、自分も精一杯楽しませていただくつもりだ。

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