メタ認知能力を高めるのが私のコンサルティングスタイル

ゴールドマン・サックス社中小企業経営革新プログラムの一環として、東北エリアの若手コーディネーターの育成に取り組んでいる。
私が担当しているのは、デザインを活かしたインターンシップを企業と学生に提供したいというSさん。

地域の中小企業の経営革新に資するインターンシップの手法もさることながら、それにどのような意味をもたせるかを中心に議論をふっかけること9ヶ月、ようやく「デザインを活かす」という、ややもすると表面的に捉えられてしまいがちな話から、ぐっと踏み込んだ話ができるようになったので、そのやり取りの一部をここに書き記してみる。

入口となった言葉は「本質的」。
「本質的でないことに対して、もやもやする」というSさんに、では

本質的とはどういうことか?

というところから考えを進めてもらった。

□本質的とは

心から納得←主観的←その人自身のルーツ←ストーリー、今に行き着くまでの背景←その人自身のルーツがつながっているストーリーを大事にしたい。

松﨑:経営者の心の底から湧き上がる何かがあり、それを実現するためには、解決しなければいけない課題がある。それを解決するためにインターンシップをやろうとしているのか。

Sさん:やりっぱなしではなく、デザイン思考的プロセスを踏むけれど、その先のビジョンに本質がある。

松﨑:本質にたどり着くためのインターンシップ。あえて、主観的に行っていることが、本質とどうつながるんだろう。その一つのキーワードが「ストーリー」なのか。

Sさん:経営者ひとりひとりのストーリーがあり、一見あえて非効率に見えるけれど、その人が主観的に、これこそ本質だと感じ、納得している。その人自身から見て、理不尽さを感じたり、「それっておかしくないか」と思っていることが、ストーリーの中にある。

松﨑:本質を見極めているのか、本質と相対しようとしているのか。あるいは、本質とは何かを追求している姿勢なのか。

Sさん:見極めていない。本質がゆらぐから。

松﨑:揺らぐ本質に対して、どういう関わり方をしているの。そこに共感ポイントがありそう。
ゆらぐ、変化しているけれど、変わらない感じなのか、外から見たら変わらないけど中がうごめいているのか、外も変わっているのか。
たとえば人間は、外見も変わっているでも、同じ人。そういう感じでとらえているのか。

Sさん:言葉にするのは難しい。
物質、生存的に変わりはないけど、見た目は変わる。

松﨑:われわれを構成するタンパク質の成分は変わらないが、見た目は変わるし、考えも変わる・・しかし、存在は変わらない。
われわれの本質はどこにあるのか、Sさんの持つ本質についての考えにつながってくるかな。

Sさん:本質を構成するエッセンス的要素は、ストーリーにつながるもの。追い求めているうちにレイヤーが増えより解像度が高く、たくさんの色が見えるイメージ。

松﨑:ここで言う本質は、人によって決まる?

Sさん:人によって決まるわけではない。お互いに変化を与え合う存在。まわりからの支援、会社の仲間、地域によるかもしれない。

松﨑:この三つのレイヤーを通して、本質を見ていない時、本質は存在する?

Sさん:存在する。ピントが合っていないだけで、あると思う。潜在的なものかもしれない。

松﨑:マジョリティの人たちにとっては、効率性の高い状態は、彼らにとっては本質的になるかもしれない。何が違う?

Sさん:社会、構造を考え、地域、資本主義を考えると、効率、経済、いろいろな要素が絡み合っているけど、実は一つ、もっとシンプルで、生態系が豊かな街が本質みたいなコンセプトのつくりかたもある。
個人の視点に立つと、もっと多様な本質があるような気もする。

松﨑:マイノリティが切り捨てられる状態は本質的ではないと感じ取っているみたいね。
逆に、社会の本質を、マイノリティが切り捨てられない、四捨五入されないことと捉えているのか。

Sさん:切り捨てられない、きれいな言葉でいうと、多様性。良質なカオス。

松﨑:混ざりあっている感じなのか。ぐちゃぐちゃな感じなのか。

Sさん:ぐちゃぐちゃではないけれど、秩序がない。
良質なカオスが、ジェントリフィケーション的なことにつながる。

松﨑:それは専門用語で言うとカオスの縁という状態。
いろいろなものが存在できて、固定されることなく、ぐちゃぐちゃになることもなく、いい感じで収まる。

社会が良質なカオスであるべきだという価値観を持っているのかな。
確かに、組織というのはカオスの縁から複雑性を下げている状態。
複雑性を上げると面白くなるが、複雑性は高すぎてもいけない、低すぎてもいけない。
中途半端な複雑性の状態で色々なものが生まれる、生命が誕生したりするのもその状態。
自然はちょうどいい複雑性だが、人間社会、会社はマネジメントするために複雑性を下げてしまい、そのために、進化が起こりにくい。
逆に、変なことが起こりやすい状態を作るというのが、Sさんが見ている社会、地域の状態かなと思いながら聞いていた。
複雑性は上げすぎるとばらばらになる、適度な複雑性の幅に収める。
社会を作る中で効率性を追求すると不自然なことを作る。
みなで同じ服、みなで同じことは不自然。
それがコミュニケーションのコストを下げることにつながるから価値はある。
あえて、そこを非効率にすることで複雑性が上がる。
複雑性が上がることで、社会システムの持続可能性が上がる。
世の中はガチガチな方に傾く傾向がある。意図的に複雑性が上がる介入をすることで、適切な生態系を保ちたいところ。

Sさん:複雑性と余白の違いはどんなものなのか。

松﨑:複雑性が低い状態は「同質」、つまり、みなが同じことしかしない。
みなが多様性を持ちながら混ざり合っているから、平衡状態になる。

Sさん:複雑性が低い中でなにかアクションを起こした人が「出る杭」ということになるのか。

松﨑:普通の人間がレールを行く選択肢がないと思っているところで、横を走ることで、選択肢が増えた、バリエーションが増えた・・これが、複雑性が高くなった状態。
A社さんのプロジェクトは社会の複雑性をあげようとしている。C社さんもそう。
比較的よく使われる言葉に直すと、「社会の中の選択肢を増やす」あるいは、「多様性を高めていく」という言い方が近い。
今作ろうとしているプロジェクトには「マイノリティを切り捨てない」という要素は入っていそう。
企業のことを企業単体で見るのではなく企業と地域、企業と社会という関わりの中で、企業を捉え直すプロジェクトを作っていると思う。
そうでないとつじつまがあわない。
単体の企業で見ると効率性が落ちているが、社会システムで見ると、効率性が上がり、持続可能性が高くなり、より望ましい。社会との関わりの中で、企業の革新を促すインターンシップをつくろうとしているんじゃないだろうか。

Sさん:社会との関わりの中でアクションを起こしているというのは、イコールほぼアート。企業さんはアーティスト。
アーティスト的な企業さんはどういう社長なのかという話になると、人を構成している断片的なきっかけ、それらが集まったストーリー、感性を通して、社会、地域を見たときに、理不尽なこと、本質的でないことに葛藤している。
そこに課題を感じて、「問題提起としての事業」を起こしている。

松﨑:「アート」という言葉はそこで使わずに、Sさんがなぜこれに取り組むかという文脈で使うとよい。
乱暴にまとめると、企業経営者はその人の経験をもとにして、自分の中から湧き上がる問題意識を持っている。
社会に対する問題意識を、事業を通して表現し、解決しようとしている。

Sさん:解決した結果、ちょっと社会が変わる。

松﨑:まさに社会起業家だけど、その言葉は使わなくていい。

Sさん:そこまで意識的な社会起業家じゃないし、そんなに「意識高い」感じでないのがいい。
地域で、社会起業家としてイニシアチブを取るのではなく、自分の視点価値観で、これはと思ったものを解決しようとしている。

松﨑:統計をとって、「これが社会問題だから解決するんだ」ではなく、いろいろ調査はするかもしれないけど、自分のルーツが積み重なって、化学反応して、湧き上がったパッションがあり、それに従って事業している人たち、という感じ仮名。

Sさん:必ずしも本人はそこまで主観的なイメージを意識しているとは限らない
主観的きっかけ、内生的なものから出ているタイプもいれば、自分のうちから湧き上がってくる内省的なものではないけど、それぞれの背景、バックボーン的なものが作用しているから新しい組み合わせが生まれることもある。

松﨑:ストーリーにこだわらなくていい。「その人の経験に基づく社会の目」くらいのライトな感覚でもいいかも。

・・・更に話は続く

とても迂遠なことに見えるかもしれないが、これからオーディネーターとして生きていこうという人に対して、地域の中小企業の経営革新を企業経営単体で見ずに地域や社会を含むシステムの中で考えられるようになってもらうには、このようなマニアックな問答を通して、全体を俯瞰する能力、メタ認知能力を高めることが必要なのだと考えてやっている。
そこが、普通のコンサルタントとの大きな違いだとご理解いただければありがたい

 

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