大学に実務家教員を増やすべきではないかという議論がある。
実務家に、大学の仕組みや授業計画の作り方を教えることで、大学教員として活躍してもらおうという話だ。
自分自身、学位は持っているものの、研究業績ではなく実務経験をもとに大学で勤務しており、他人事ではない。
そこで、自分なりの見解を少しまとめてみた。
実務家教員が求められる背景のひとつに、「社会人の学び直し」という問題がある。
実際に社会人として活躍している人たちの再教育に実務家教員が必要であるという議論だ。
一見正しそうにも聞こえる議論だが、果たしてそうだろうか。
もし、「社会人の学び直し」が「最新の情報やスキルを身につけること」であるなら、第一線の実務家がそのまま大学外の実践の場で伝えるほうが効果的だ。
一方、大学で学び直すということであれば、時間で劣化しない根本的な知識や「知の作り方」を学ぶのが効果的だ。
多くの社会人が自覚しているニーズは前者でだろうが、それは大学で学び直す必要のあるものではない。
それに対して、後者の価値に気づくような人にそれを教えられる実務家はそう多くはない(もちろん皆無ではない)。
一般の学生を対象にした場合、実務家が実務を教えるというのであれば専門学校ないしは今後できる職業大学でということになる。
大学教育として教えるために必要なのは、大学のしくみや授業計画の作り方、授業の進め方ではなく、実務家自身の経験をいかに理論体系と結びつけ一般化できるか、更にはどのように理論化できるかという点であり、単に事例を教えることや教科書通りに授業を進めるというのではは大学の講義にはならない
理論化・一般化した内容を15回分体系立て話ができるというものであれば講義として成立するし、それが可能なコンテンツをいくつか持っている人であれば、研究者以上にすぐれた大学教員になりうる。
一方、理論化・一般化した内容ではなく経験に基づく話のみをするということであれば、講演とか交流という形をとるのがよい。
また、スキル系の内容については、正課科目ではなくエクステンションとして実施するのが効果的
大学と実務家の関わりとして、せめてこの程度の切り分けはしておいたほうがよい。