12月21日、みやぎCOC+シンポジウム2019
目次
COC+事業の総括とこれからの地域協働教育を考える
が開催された。
会場には100名(なんとぴったり)の参加者が集まり、この事業全体の振り返りと今後について考える機会となった。

主催者挨拶、文部科学省の祝辞に引き続き、現場担当者の私から事業成果報告を行った。
報告した内容は以下の通り
- 全体像
地域起票のイノベーションマネジメントと、高等教育機関の教学マネジメントを連動させることで、大学を核として「人と地域・企業がともに育つ仕組み」を創る - 実績
- 事業協働地域就職率 目標 2018年 50.66% (申請校 41.0%)
実績 2018年 48.23% (申請校 44.2%)
(参考)申請校東北六県就職率 2018年 60.0% - 雇用創出数 目標 2018年 70名 実績 77名
- 事業協働地域就職率 目標 2018年 50.66% (申請校 41.0%)
- 教育プログラムの実践
- 地域の課題I(東北学院大学開講) 2019年度受講者 1,747名 単位取得者 1,489名
- 地域の課題I(単位互換版) 2019年度 受講者11校 111名(うち高校生3校 9名) 協力者17名 参観者10名
- 地域の課題II 参加企業 のべ29社
- 地域課題演習 2019年度 受講生 27名 参加企業12社
直接コーディネート+復興庁・宮城県の事業と連携 - ハンズオン研修による授業改善 38回 7校 対象教員11名 参加者93名
- FD/SD研修 72回 受講者 役1,700名
- ミニカリキュラムの設計と地域高度人材指標の開発・運用
- 地域企業との連携
- 宮城の企業発見プログラム 参加企業 のべ47社 参加学生 557名
企業の魅力度の平均 参加前 3.52/5.00 参加後 4.47/5.00 - 共同キャリア支援セミナー 67回 参加学生 1,379名
- 地元企業魅力発信イベント 参加企業 のべ79社 参加学生 236名
事前セミナー 参加企業 のべ56社 69社
事後セミナー 参加企業 8社 9名
- 宮城の企業発見プログラム 参加企業 のべ47社 参加学生 557名
- 今後の可能性
自走可能な経営革新・雇用創出と人材育成のプラットフォームづくり

事業報告の後は、夏に実施した地域か大演習に参加した学生、受入企業、現地コーディネーターによるパネルディスカッションを行った。
参加学生は 東北学院大学経営学部3年生 高橋ひな子さん
受入企業は 三葉水産株式会社 辻 尚広社長
現地コーディネーターは (一社)フィッシャーマンジャパン、ヤフー株式会社 松本 裕也 さん
高橋さんからプロジェクト紹介をしてもらった後、ディスカッションに入った。
この演習(実践型インターンシップ)によって、どのような大学生としての学びがあったか、企業にとっての価値があるか、地域にとっての意味があるかといった点を中心に、会場にも意見を求めつつディスカッションを進めた。
学生の学びとしては、高橋さんから
経営学部で、基礎的な部分のマーケティング、ビジネスの知識を点々と科目ごとに勉強している状態。それが実際どう生かされているか、どうすると失敗するか、失敗したら、これはあの知識があったらできたと実感できるところで大学の学びと直結している。
という話や、会場に来てくれていた学生からは
大学で学ぶことの意味が学生にはわからない。演習・インターンシップで初めて大学の価値がわかる
といった意見が出された。
企業にとっての価値としては、辻社長から
会社にいろいろな課題がある中で、それを解決するにしても、社内の様々なレベルの部分で進められない。新しい風としての大学生が入ることで、そのプロジェクトを通した課題解決が進み、の社内の空気も変わっていく。
という言葉とともに
これから世の中が変わって行くにつれて、会社も変化していかなくてはと強く感じる。そこで人材不足もあるが、変化に対応できる能力・レベルの人材が、なかなか思うように育たないのが現状。今回のプログラムは、一企業としてすごく刺激を受けたが、もう少し期間が欲しい
といった要望も示された。
また、南三陸町でコーディネートをしている山内さん(会場参加者)から
社長、幹部が見ている現実的な日々の課題に対して、「根っこはそこではない。根っこを解決しましょう」という関わりをすることで価値が生じる
といったコーディネーター視点での価値が示された
地域にとっての意味や価値については、現地コーディネーターの松本さんから
演習やインターンシップを実施することによって、若者たちが連鎖的に課題解決する能力になる。前向きな企業が受け入れて、会社を変える。地域を巻き込み、牽引しながら変えていく。そういう視座の企業はまだ多くはなく、高い視座でできてくれる学生によって企業が帯を締め直す。それが連鎖的に地域を変えていく。
最近は優秀な学生が地方に来る。公務員になりたくない、大企業は楽しくないといったことを言う子が増えている。その受け皿として実践型インターンシップ、すなわち「何者かになれる場所」「挑戦できる場所」が重要。その受入体制を作っていけば、地域に来る子は増えてくる。そういう地域、学生を作っていくとイノベーションを起こす学生が地方に集まってくる。
という意見が示され、会場にいた湯沢市役所の高橋課長からも
魅力ある企業作りが必要。難しいなら行政が入っていく。それが地域の魅力アップにつながる。地域に得られる価値はそういうところ。
という、自治体職員としての本気さのこもったコメントが寄せられた。
この演習(実践型インターンシップ)のプログラムに対して高橋さんからは、
大きなスケールで世の中を見たいと考えている学生がいることを大人がどれくらい知っているか。どれくらい期待されているかわからない就職説明会やワンデイインターンシップなどに魅力を感じない。その中でこうして企業に入り、ほぼ経営者と同じ立場で活動する中で、自分にも何かできることがあるはずと感じる。だからこそもっと学びたい。そういう意味で就労型と実践型では価値が違う。実践型をもっとやってほしい。
とのメッセージが発せられた。

パネルディスカッションの後は、地域協働教育の意味や、今後の継続発展の方向性を考えるテーブルワークのセッション。
学生も教員も、企業や自治体、企業の関係者も対等な立場で議論を展開した。
テーブルでの議論の内容は、学生たちが発表してくれた。
地域協働教育の意味については
大学で知識は学べるが、知識をどう生かしていくかという部分が学べていない。そういう場があまりない。実習・インターンシップはその場として重要。知るだけではだめで、知行合一を通して本当の意味で学ぶことができる。
地域協働教育の今後の継続発展の方向性については
なぜこの企業で演習・インターンをするのかの意味づけが必要。大学側ができることには限りがある。そういう意味でのコーディネーター、ファシリテーターも重要視すべき。
プロジェクトについての根本を見つめ直すべき。大学の中でコーディネーターを配置すべき。コーディネーターの価値は面談、翻訳の役割。学生側、企業側の言語をそれぞれ、翻訳して解説する。それによってそれぞれの価値を作り出す。また、それが大学の教材となる。コーディネーターの配置を地方自治体が援助するのがよい。
学生がその企業に行ってどんな成長ができるか、どんなところが自分のプラスになるか大学が教えてあげることも必要。
といったまとめが示された。

今回のシンポジウムでは地域課題演習を題材に地域協働教育の意味づけと今後の方向性を考えた。
学生が自分の言葉で語っていた点は非常に頼もしかった一方で、もう少し彼らの中で「大学における学びとは何か」について考えて欲しいなと感じるところでもあった。
これは、卒業時までの宿題ということにしておこう。
丸4年間の事業を通して、何を残せたのかという総括は別の機会に譲るとして、今回のシンポジウムでは、学生も、企業も、大学も、自治体もすべてが本気になることが人を育て企業を育て地域を育てることになるんだということを、実感として受けとめてもらえれば成功だったといえるだろう。
後はそれをどう展開していくかだが、それは次の段階を進める人たちに委ねるとしよう。