コーディネーター養成研修in徳島

1月9日、徳島大学にて

インターンシップコーディネーター養成研修(座学編)

の第1回を開催した。

徳島大学で展開していた「実践力養成型インターンシップ」を県内の高等教育機関のコンソーシアムで実施できるようにするための研修として位置づけられるものだ。
参加者は各大学/高専から推薦された先生方や事務の方。
さらに、過去にインターンシップに参加して、その後後輩のサポートをしている学生さんたちも参加してくれて、結果として大人と若者がほぼ半々という理想的な構成となった。

この講座全体の流れとしては

  1. インターンシップの効果とコーディネーターの役割
  2. 教育的効果の高いインターンシップの設計
    ⇒関わる人すべてにメリットのあるプロジェクトの設計
  3. 産学協働教育基盤の構築
    ⇒地域の産業と高等教育をどう結びつけるか、その仕組み作り
  4. 教育的効果の評価と質保障のあり方
    ⇒教育的効果の評価、プログラムの運用の評価と改善

とし、その初回として今回は

  1. インターンシップの類型
  2. インターンシップを通した地域と大学の関わり
  3. 教育的効果の高いインターンシップの要件
  4. インターンシップの流れとコーディネーターの役割
  5. コーディネーターの配置
  6. コーディネーターの能力要件

というコンテンツを準備し、特に1〜3を中心に講義/ディスカッションを行った。

1.インターンシップの類型

インターンシップには現実として「仕事理解型」「採用直結型(教育機関としては望ましくない形ではあるが)」と「業務補助型」「課題協働(PBL)型」「事業参画型」があり、徳島県のCOC+で実施している「実践力養成型インターンシップ(寺子屋式インターンシップ)」は「課題協働(PBL)型」「事業参画型」に相当するもので、高い教育的効果と企業メリットを両立させるプログラムとなっている。

こういったプログラムを実施することの企業にとっての価値は、新規事業開発おための仮説検証が進むことに加えて、社内に挑戦的な風土を育めることが挙げられる。

こういったプログラムはCOC+事業を機に全国の大学で取り組まれるようになってきた。
代表例としては、岐阜大学や宮崎大学のプログラムが挙げられる。
特に岐阜大学は、特定の業界ではなく地域の産業界が共通して求める能力を定義し、その開発のために学年進行に合わせて発展する複数のプログラムをカリキュラム上に配置している。
単独のプログラムではなく、カリキュラム全体としての設計がなされている点が重要なポイントだ。

2.インターンシップを通した地域と大学の関わり

高等教育機関が地域と関わる際には、構造化されたか離宮r舞うや、質保証の仕組み、評価の仕組みといった「フォーマルな学習」を地域に持ち込むことが重要になる。
その前提のもと、地域の中に「異物」としての学生が入ることで、地域の中の関係性、相互作用が変わる。
どんなコミュニティでも時間とともに同質化して、刺激に対して一定の反応しかできなくなるが、インターンシップによって地域コミュニティの活動エネルギーを時々高めることができる。

企業にとっては、小さな仮説検証、試し打ちができる効果が大きい。
企業は自社の方向性を持ち経営計画を立てるが、世の中の感度に合わせてそれを進化させる必要がある。
自社の方向性を踏まえた仮説検証を数多く行い、よりよい成果につながる見込みの多いものを全体戦略の中に取り入れていくことで、自社の計画をよりよいものにできる。

学生にとっては、「深い学習」のプロセスが大きな価値となる。
様々な学習活動の中で、「仮説を立てる」「離れた事柄に適用する」「ふりかえる」といった深い学習の機会を設定することができるのがこの種のプログラムの特徴だ。
学生の専門知識の応用場面を創るインターンシップ、汎用的な能力を高めるインターンシップ、専門知識を他に転用するインターンシップ、といったものが考えられるが、各プロジェクトごとに、どこに注力するかをコーディネーターが調整することが求められる。

3.教育的効果の高いインターンシップの要件

インターンシップの教育的効果を高めるには、

  1. 実施目的の共有
  2. 目的に合ったプログラムの設計
  3. リアルな体験機会の設計
  4. 学生の目標設定/フィードバック/振り返りの徹底

といった要件があり、その前提として、

すべての関係者にとってもメリットのある場をコーディネーターが設定する

ことが求められる。

ここで、インターン生が与えられた課題を疑う機会が仕込まれていると、より高い教育効果が期待できる。
中小企業では現状の問題点と課題の区別がついていないことが多く、学生の側も研究上の課題と実践上の課題の区別がついていることはほとんどない。
現場での活動を通して、実践課題の設定に取り組むことができれば、研究における仮説検証と実践における仮説検証の共通点と相違点を理解して動くことができるようになる。

4.インターンシップの流れとコーディネーターの役割

インターンシップを、「開発期」「運用期」「評価期」の三つに分割すると、受入企業の開拓、導入計画立案、プロジェクト設計、広報、学生マッチング。研修の設計といったことを行う「開発期」が最も重要になる。
ここで十分な仕込みができていないと、企業での活動が始まってから細々としたメンテナンスが必要になるばかりか、学生が意義や目的を見失って教育的効果が薄れる危険が高くなる。

一番最初の受入企業の開拓においても十分な注意が必要だ。
「若い子を育ててあげたい」「若者の斬新な発想を生かしたい」という企業では実践型のインターンシップを実施するのは極めて難しい。
個人的な経験を伝えることを教育だと考えていたり、設定された課題の妥当性を吟味することなくアイデアを求める傾向があるからだ。
コーディネーターには、そういった企業経営者には違うプログラムに参画してもらうような仕組み作りが求められる。

3時間の研修があっという間で、その中でできるだけ実務上必要になる考え方をコンパクトにお伝えするようにした。
そのせいか、研修終了後一時間半にわたって学生たちから質問攻めに会うことになったのだが、それはまた別の記事で紹介したい。

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