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地域で学ぶということは複雑な文脈の上で知をつくること

4ヶ月(正確には110日)間お手伝いした地域イノベーター留学の最終報告会に参加した。
全国7地域で、地域企業の課題解決に取り組んだ都市部の人材の成果を報告・共有する場だ。

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1 地域イノベーター留学の設計

このプログラムは、地域に波及効果をもたらすような企業の経営課題の解決に都市部の人材が取り組むことで
その企業、ひいては地域にイノベーションの契機を作るというもの。

  1. 「イノベーター生(参加者)」に期待される役割は、地域や地域企業の中で、外部の人間の視点を持って探査型の行動を繰り返すこと。
  2. それら結果をコーディネーターが意味づけして、企業の戦略に取り込む。

この組み合わせによって、地域企業の中に創発型戦略を実現することを狙っている。
大手企業であれば、ミドルマネージャがその役割を果たすが、地方ん中小企業は経営者を含む全てがプレーヤーの側面を持つ。
そのため、戦略的なミドルマネージャの役割を果たす人材が社内に存在しづらい。このプログラムは、その穴を埋め、地域の中小企業のイノベーションの可能性を高めようとしている。

2 地域で学ぶということ

この種のプログラムを実施すると、「地域の活性化に取り組みたい」という人が反応しやすい。
ところがそこに罠がある。それは「地域」というものを一般名詞として捉えてしまうという罠だ。

そもそも地域は地理的な自然・人工空間とその中に含まれる要素としての人や企業などから成り立つ。
空間は自然環境によって生み出されたものではあるが、人の生活や経済活動によって大きく意味合いが変わり、それによって地理的な意味での地域の境界も変化する。
一方、要素としての人や企業といった様々な主体はそれぞれが時間的文脈、すなわち歴史の結果として存在し、過去においても現在においても他者や環境との相互作用を繰り返しながら生きている。
つまるところ

互いに影響を与えながら要素も環境も変化する

という社会のダイナミクスを見ることができる最も身近な存在のひとつが地域なのだといえる。

それは別の見方をすれば、様々な事象が地理的、歴史的、文化的、さらには経済的、科学技術的な文脈に深く埋め込まれたものが地域であり、「地域」という言葉で表現されるべき実体は実は存在せず、それぞれの地域が全て個別のものだということでもある。

その地域で学ぶということは、必然的に複雑な文脈の中で学ぶということになる。
一般的な学校教育では、様々な知識・技能をリアルな文脈から切り離し、教室というバーチャルな空間の中で学ぶという形式をとっている。
それは、効率よく知識や技能を身につけるのに適した方法であると同時に、それらのつながりを自分自身の文脈にカスタマイズする機会を得られない方法でもある。
逆に地域では、複雑な文脈が前提条件として存在し、それに自らの知識や技能を適応させながら、新たな価値を見出したり、自らの思考や行動を変化させたりすることができる。

つまるところ、地域で学ぶということは、

複雑な文脈の上で試行錯誤を繰り返しながら、自分自身の知識の文脈を構築する

ことにほかならない。

3 なぜ企業の活性化?

それぞれの地域に埋め込まれた文脈はそこに関わる人や企業といった要素にとっては制約条件として存在する。
地域にイノベーションを起こそうなどと考えるなら、地域を構成する要素と、制約条件、そして要素間の相互作用を理解する必要がある。
地域の要素である人や企業は、地域の文脈に埋め込まれた部分と、地域外につながる部分をあわせ持っているが、地域にこだわりすぎる、すなわち制約条件があまりに強く作用すると、地域の文脈の中でしか動けなくなるという事態が発生する。
個人の場合はそれでもある程度日々の暮らしが成り立つだろうが、企業はそれでは立ち行かなくなる。
経済環境や市場環境の多くは地域の境界を越えて存在するからだ。
それゆえに地域外との相互作用によって、その企業自身の行動ルール(戦略)が変わることを受け入れやすい、あるいは、受け入れざるを得ないのが企業の立ち位置だ。

地域の変革にはその地域を構成する要素あるいは主体としての人が自らの行動ルール(戦略)を変え、他者や環境との相互作用の形を変えていくことが求められる。
それを最も起こしやすいのが、地域の文脈に加えて経済というルールを持つ企業なのだ。

地域イノベーター留学と言いながら地域企業に焦点を当てる理由はそこにある。

とはいえ・・・そこまでの話を明示したわけではない。
できれば、そういったことを実体験を通して学び取っていただきたいというのが講師サイドの考えだからだ。

今日の最終報告の中でも、そこまで無意識に感じ取っている人もいれば、単純な知識・スキルの活用として捉えている人もいたように思う。
それは、その人の現時点での学びのフェーズがそういう状態だというだけのこと。
将来、その人が本当に地域の中で何か事を起こす時になれば自然とこの講座の内容を反芻することになるだろう。

その時になって、地域活性化というファンタジーから卒業できる。それでよい。
学びというのは押し付けるものではないのだから。

 

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